スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

グルメ12 中華の技法 at 香満楼&川力餐庁

2007年10月23日 01:11

日本料理と中華料理、何が違うって「炒める」技法ほど異なるものはないのではないか?
中華料理は油っぽいイメージがあるが、それは炒め物が多く、炒め物は油を使いまくるからだろう。
また、日本料理とアジアの各国料理、大きな違いは「スパイス」であるように思う。
日本の伝統料理にも、山葵や柚子、山椒、生姜など数多くのスパイスがある。
でも、いずれも他の味覚を引き出したり、臭みを消すために薬味や隠し味として使われることが多く、一緒に炒めたり強く煮出したりされることはほとんどない。
ましてインド料理やタイ料理のように、スパイスそのものを複雑に構築して楽しむことは、まずない。

北京ではこのふたつの技法、「炒める」と「スパイス」に本当に感動させてもらった。


10月4日から14日にかけて中国に行ってきた。
4~6日まで北京にいたのだが、北京にはふたりの知人が暮らしている。
「おいしい店をよろしく」
彼らにはそんなちょっと迷惑なお願いをしてみた。

まず5日。
連れていってもらったのが北京料理や山東料理で有名な香満楼酒家。
注文してすぐさま出てきた西芹炒百合(セロリとユリ根の炒め物)に衝撃を受けた。

「何これ、サラダ?」
あまりの早さと何の調理もされていそうにないその姿に、本気でそう思った。
朝露に濡れたセロリが太陽に向かって思いっ切り背伸びをしているところをちょこっと切って出しました。
そんな感じ。
おそろしいほどみずみずしい。

ところが。
食べるとシャキシャキサクサク。
信じられないことに、しっかり火は通っている。
一方ユリ根はホクホクねっとりだ。
なんで?

出てくる答えはひとつしかない。
火だ。

油通しをしたあと信じられないほど強い火で、信じられないほど手早く調理する。
そうするとこんな姿になるんじゃないか。
そう考えるしかなかった。

きっと特別な油を使ってるわけじゃない。
特別なダシや特別なスパイスを使っているわけでもない。
ただすばらしい素材を強烈な火で炒めるだけ。

だとすると、自分はこれまで「炒める」という技術の意味を知らなかったことになる。
「炒める」ってしんなりさせることじゃなくて、よりシャキシャキに、よりみずみずしくすることだったんだ。

この旅を通じてもっとも感動したのは、北京ダックでも東坡肉(トンポーロー)でも上海蟹でもなく、ただの炒め物だ。
そういえば8年前の旅で北京を訪れたときもそうだった。
2週間近く滞在した北京でもっとも感動した料理はただのモヤシ炒めであり、ただのピーマン炒めだった。

と言っても、その後出てきた北京ダックもまたすばらしかった。
北京ダックを食べるのは3回目だけど、今回、はじめておいしいと思った。

なぜあんなに濃い味噌をつけるのか?
なぜわざわざ皮で巻くのか?
なぜ長ネギを挟むのか?

簡単な話。
アヒルの肉の個性を引き出すため、だ。

この店の北京ダックの肉は、皮はパリパリだが、内側についた肉はジューシーでしっとり、結構厚い。
肉だけ食べてみるとさ、サクサクねっとりでおいしいんだけどアヒルの臭みもきっちり残っている。
それに味噌を垂らして長ネギを挟み、皮で包んで食べてみると、「なるほど」となる。
北京ダックってきっとパリパリさせすぎて香りを飛ばしちゃダメなんだろう。

香満楼、本当にいいお店だ。
8年前に北京に行ったときは、その辺の飯屋や屋台の料理がとんでもなくおいしかったし、こういう中・高級店に入ることはなかった。
でも今回北京や上海でそうした店に入って中華の奥深さをさらに感じることができた。


さて、2日目の5日、別の友人に四川料理の川力餐庁(2文字目、本当は力に点が2つつく。正確な店名はよくわからん)に連れていってもらった。
この店、四川省の施設らしく、四川省がプライドをかけて最高のシェフを呼んできているとか。
入口には20~30人の中国人が席を待っている。
スゲー。
中国人が待っている!

この店がまたすばらしかった。

8年前、四川省の成都に約3週間滞在した。
夏の成都は暑いうえに蒸して不快指数は100に近い。
街並みだってきれいじゃないし、見るべきものだってそんなにない。
3週間も滞在したのは、ひたすら料理がうまかったからだ。
でも、川力餐庁の料理は当時のどの店よりも、はるかにうまかった(担々麺だけは成都のある店が最高だったが)。

たとえば水煮。
メニューを見るとその姿がとにかくスゴイ。
まっ赤っか。
唐辛子と花椒(ホアジャオ)でスープが見えない。
おいしいおいしくない以前に、これ、食べ物?
スープに金属入れたら水素がプクプク出てきそうだけど。

ところが。
この料理、実はそれほど辛くない。
なぜ?
よくわからん。
よくわからんのだが、むしろ甘い。
っていうか、中に入れてあるものがどういうわけかとても甘く感じる。
スゲーよ、中華。
やっぱりスゲー。

四川料理の最大の特徴は辛味というよりスパイスだと思う。
唐辛子ひとつとっても、今回の水煮のように辛味をおさえて薬味のように使ってみたり、ストレートに辛味で勝負してみたり、いろいろな使い方をする。
麻婆豆腐なんか豆腐と肉だけの料理なのに、唐辛子やら花椒やら八角やら味噌やらを使って、スパイスを幾層にも積み重ねることでとても深い風味を引き出している。

これが楽しくって仕方がない。

キノコ類をアンに絡めた料理(注文したつもりはないので名前がわからん)は、シナモンやら八角やらのさわやか系のスパイスと、何種類ものキノコの香りと食感がすばらしかった。
最後に出てきた担々麺もそう。
味噌のこってりした味に、唐辛子やら花椒やらがまた絶妙にあうんだよなー。

大好きだよ、四川料理。


というわけで、旅の最初の2日、すばらしいお店を2軒も訪ねることができた。
とっても感動した。
紹介してくれたふたり、本当にありがとう。

一方で、昔はあれほどおいしいと感じた屋台メシが、ことごとくおいしくなかった。
最初は自分がグルメになったからかと思ったが、いまは確信している。
屋台の味が落ちたのだ。

考えてみれば当然か。
物価がこれだけ上がっている中国で、屋台メシの値段はそんなに変わっていない。
食材が悪くなったのは当然だろう。
同時に資本経済化のおかげで、質は悪いが安くて長持ちする農薬づけの野菜が広まり、化学調味料が一般化した。
屋台メシは屋台メシなりに資本化し、ファーストフード化したというわけなのだろう。

ちなみに今回もっともおいしかった屋台料理はサソリの揚げ物だった。
海老みたいでね。
まぁ海老とサソリが並んでいたら、そりゃ海老を選ぶけど。
sasori.jpg
サソリ君とタツノオトシゴ君

グルメ13 旬の力、場の力 at 成隆行蟹王府
グルメ11 カクテルの真実2 at Bar FOUR SEASONS
関連記事