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2007年06月08日 01:33

アパートの5階。
神楽坂を見上げ、工場街を見下ろしながら、ベランダでまったりしている。
6月8日、0時00分。
とてもやわらかい風が吹いてきて、ラムで火照った身体をやさしく冷やしてくれる。
いい感じだ。

6月7日の午前8時。
正面の古ぼけた工場がせわしなく震え出し、隣の近代ビルには洒落たスーツの男女が眠たい顔で滑り込み、真下の道路ではゴミ収集車がガーガー怒鳴りながらゴミを噛み潰し、その脇をトラックが重みで巨体をねじらせながら角を曲っていった。
そんなうるさい1日はこの風がすっかり洗い流してしまった。

6月8日の午前8時。
ラムの酔い、睡眠不足の酩酊を感じながら、朝10:00の取材に備えてあの暗くて涼しげな通りを暑苦しそうに歩いているだろう。
ゴミ収集車が通せんぼして、その脇をトラックが腰をくねらせながら曲っていくことだろう。
そんなうるさい1日のためにもう寝た方がいいのだろうが、もう少し風を浴び、もう1杯、ラムが飲みたい。

風はほどよく湿ってシルクのようにきめ細やかだ。
木とサトウキビが香る甘いラムは夕方の海のように滑らかだ。

裏のちょっと向こうを通る高速道路の高架からひっきりなしに車の通過音が響いてくる。
ひっきりなしの騒音はやがてリズムを持ってパタパタ舞うポスターの音とまみえて音楽になる。

隣のビルにはまだ昼のような灯がともっている。
雲の隙間から遥か昔昔の星が光っている。

ラムを飲んで目をつむる。
風が下から吹いてきて霧になった身体を空に吹き上げる。

身体がなくなったので音になってみる。
音が見えたので光になってみる。
光が触れたので風になってみる。

目を開けると途端に世界が固まって昼のような灯がともり、通過音が夜を震わせ星がはためきポスターが舞う。


子供の頃、遠足や家族旅行から帰るのが惜しくて惜しくて、寂しくて寂しくて、とどめられない時間をなんとかとどめたくて。
日記に書いても絵に描いても写真を撮ってもテープに録ってもとどめられなかった。

ひさしぶり。
元気だった?


ラムを飲んで風に触れ光を浴びて音に揺れる。
でっかい笑い声がして酔っ払ったおっちゃんふたりが大声で話し合っている。
灯がともり車が鳴りポスターが揺れおっちゃんが笑う。


空を見上げると鳥がビルの灯と星の光を横切った。
とてもとても青かった。
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