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グルメ5 よい店の条件 at ちょい干し てっ平&長谷川

2007年04月06日 00:01

神楽坂、毘沙門天の向かいの小さな小さな路地、「ここ、通り抜けられるの?」というほど細い通りの中ほどに、「ちょい干し てっ平」はある。
夜、路地裏に妖しく浮かぶ光に誘われて小道に迷い込んでみて発見したのがこの店だ。
teppei.jpg

「ちょい干し」というのは、ほんのちょっと干すこと。
気候や魚にもよるみたいだけど、たとえばアジなら2~3時間ほど干すと、余分な水分が飛ぶと同時にタンパク質がうま味成分に分解されて、それでいながら干物臭さや固さもなくジューシーで、魚をとってもおいしく食べられるのだそうな。

ここの名物はこのちょい干しの魚。
イワシ、アジ、サバ、サンマ、カマス、アナゴ、ハタハタ、イボダイ、キンメダイから聞いたことのないような季節の魚までいろいろなちょい干し、あるいはみりん干しなんかの魚を炭火で炙って食べさせてくれる。
ここで食べたメハリという魚。
とても感動した。


これまで一度だけ、焼き魚に感動したことがある。
神保町の長谷川という店で食べたサンマ定食だ。
数年前、この店の近くに勤めていたのだけれど、店に通うようになったのはずいぶん経ってからだった。
だってサンマ定食だのシャケ定食が1,500円。
ありえん。
なんでもないメニューばかりなのにほとんど1,500円以上で、それなのにいっつもいっつも行列ができている。
ためしに一度食べてみたらサンマの概念が変わるほどの衝撃を受けて、結局自分もしばしば並ぶようになってしまったわけだ。
それほど、おいしかった。


てっ平のメハリの感動も、それに次ぐくらい。
おかげで魚に対する価値観が変わってしまい、最近はスーパーじゃなくてちゃんと魚屋に行くようになってしまった。
なんてこった、またエンゲル係数が上がるじゃないか。


よい店の条件ってなんだろう?
そう聞かれたら、この「衝撃」だと答えたい。
すでに紹介した店、Barにしても井のなかにしてもエチオピアにしても、それまでの価値観を大きく変えてしまうほどの衝撃を与えてくれた。

それじゃあどうすれば人に衝撃を与え、価値観を変えることができるのだろう?
ひとつの要素はアート的な価値、つまり純粋に味。
そしてもうひとつの要素が料理を出す人の世界観。
そう思う。

悪例をひとつ。
去年の暮れ、ジビエ・ブームということでイノシシとシカ料理を食べに行った。
その店のイノシシはとても柔らかくて味が濃くて、脂はさっぱりしていておいしかった。
味だけとったら牛より豚肉の方が上じゃないかと思うことがよくある自分としては、「こりゃイノシシ料理を研究しなくちゃなるめ~」と思った。
一緒に出てきたシカの刺身も、臭みはないし甘いしですばらしかった。
でも。

それほど上品なイノシシにあのコッテリ濃厚な味噌はどうなの?
臭みの度合いも種類も違うイノシシとシカがまったく同じ味噌鍋ってのもどうなの?
焼酎はコンビニでも売ってる大衆酒が1種類だけ、日本酒もまぁ普通のが3種類。
伝わってきたのは、ここの主人はイノシシやシカの味が好きなわけでもなければ、イノシシやシカを人に食べてもらって感動を分かち合うのが好きなわけでもなく、イノシシやシカを撃つのが好きなのか、あるいはたまたまそういう仕事に就いただけなのだ、というもの。
たしかにおいしさは伝わったけど研ぎ澄まされたものではないし、その人の感覚も感情も見えてこない。
交流がない。

もちろんそれはそれでいい。
でも、二度とあの店には行かない。
イノシシやシカに感動したから、もっとイノシシやシカの料理を愛する人の店を探しに行こうと思う。
どうしたら相手にこの感動を伝えられるか?
いつもワクワクしてそんなことを考えている人の料理が食べたい。


よい店の条件ってなんだろう?
「衝撃」の条件ってなんだろう?

結局は「人」だ。
真摯に味を追い求めるアーティストとしての人。
そして、それを人に伝えたい、世界を共有したいという想い。

人間にはその人だけの味があり、世界がある。
その人は、自分をさらけ出し、裸になって「さぁこれが私の世界です」と、自分を店や料理に託して客に出す。
その世界は命そのものだから、隅々にまで神経を配り、つねに気を使って大切に大切に、店を訪れた人々に手渡している。

店で受け取っているのはそんな「人」そのものだ。
彼の感覚や感動の形であり、感動を介して人と結びつきたいという彼の想いだ。
手渡された我々は、店を味わい、味を味わい、店の人を味わい、世界を味わい、判断を下す。
味がすばらしければ素直に味に感動する。
「味」とはアートであり普遍だから、時代も国境も宗教も民族も関係なく、感動することができる。
そしてそれを追求し、大切に育んだ店の人々に感動し、その感動が自分の価値観を書き換え、世界をより広く深いものにしてくれる。
世界が広がると店の人々の世界と自分の世界が交わって、とても深い交流が生まれる。

そんな世界を持っている店こそが、よい店だと思う。
かつ、本当においしい店が、とてもよい店だと思う。


話は戻って「ちょい干し てっ平」。
この店、魚ともうひとつ、梅酒がすごい。
梅酒だけのメニューがあって、ざっと見た感じ、軽く100種以上はある。
4種類くらい飲んだけど、こちらも梅酒の概念を変えてくれた。
とてもよい店だと思う。


こういう店で酒を飲んでると、いつもこう問い掛けられている気がする。
で、君の世界は?
君はどんな店を出そうとしているの?
よかったら見せてくれないか?

ええとね。
もちっと待ってね。
エヘッ。

ちょい干し てっ平(グルナビ)

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