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恋する世界遺産15 愛の讃歌 イエローストーン

2012年01月07日 09:25

かつて自然は人の力の遠く及ばぬ存在として悪魔のように恐れられ、神のように崇められていた。
どんなに木々を伐採しようと、街を切り拓こうと、自然はあっさり回復した。
しかし、大航海時代以降世界は急速に縮み、産業革命以降地球は資源に成り下がった。
19世紀、イエローストーンもアメリカ政府によって叩き売られようとしていた。
この世のものと思えぬ景色が広がっているという伝説は語られていたが、そんなものに価値を見出す者はいなかった。

yellowstone2.jpg
イエローストーンの温泉プール。鉱物とバクテリアが虹のような模様を描き出す

しかし1871年、探検家ヘイデンが伝えた報告書がすべてを変えた。
虹色の湖や黄金色に輝く山々、天高く吹き出す泉……伝説の存在は絵や写真によって生き生きと再現され、その驚異はアメリカ大統領グラントを動かした。
売却案は破棄され、守り伝えることを誓ってイエローストーンが保護地域に指定されたのだ。
世界初の国立公園の成立であり、「環境を守る」という新しい価値観の誕生である。

1988年、イエローストーンを山火事が襲う。
火は半年のあいだ燃え続け、総面積の四割弱を焼き尽くした。
焼け野原となったイエローストーンを見て人々は言葉を失ったが、しかし自然は当たり前のように回復をはじめた。

ある種の松ぼっくりは火事をきっかけに松笠を開き、焼き払われた大地の上でのびのび発芽した。
幹を燃やされたある樹木たちは焼けた部分を覆うように組織を増やし、ライバルが消えた環境の中でより太くより強く成長した。
自然は数十年、数百年の視点しか持たない人知をはるかに超えていた。

yellowstone1.jpg
一時は絶滅の危機にあったバッファローの群れ

どんなに人が自然を破壊しようとも、億の歴史を持つ自然はあっさりと回復することだろう。
「自然を愛する」ということは弱者たる自然を管理し守るということではない。
きっと、人を超えた存在を見出し、自分を生かしてくれる恵みに感謝し、同居人である動植物をいつくしみ、同時に自然を美しいと思う「人の心」をも愛するということなのだろう。

イエローストーンは自然と人間に対する愛の讃歌なのである。



国名:アメリカ合衆国
名称:イエローストーン国立公園
   Yellowstone National Park
登録:1978年
基準:自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
概要:世界初の国立公園で、世界ではじめて世界遺産登録された12の遺産のひとつ。地下に巨大なマグマだまり持つ巨大火山で、大地が隆起や陥没を繰り返してカルデラ湖などのダイナミックな自然景観をつくり、マグマの熱が温泉や間欠泉を無数に生み出している。野生動物の宝庫でもあり、60種以上の哺乳動物、200種以上の鳥類が生息する。

※本記事は『intro.G』に連載された「二人で行きたい世界遺産」のテキストです

恋する世界遺産14 天国にいちばん近い島 ニューカレドニア
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