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恋する世界遺産6 愛と美の神殿アブ・シンベル

2010年06月16日 11:35

もし自分が神様だったら何をするだろう?
あれをしてこれをして……
abusimbel1.jpg
アブ・シンベル大神殿。坐像はすべてラムセス二世像。像は移転のために一度切り刻まれており、背後の山はドームで支えられている

いろいろお気楽なことを考えるのも楽しいけれど、神は同時に人の期待や願いを一身に受ける存在であり、人々の労苦を背負う存在でもあった。

古代エジプトでは王たるファラオはそのまま神だった。
神が失敗することなどあるはずがなく、戦争で負けたり飢饉にみまわれることは許されなかった。
まして自由な恋愛など……

アブ・シンベル大神殿。
エジプト史上最高の神殿で、入り口には高さ20m以上にもなる4体のラムセス二世像が見下ろしている。
内部にある立像もすべて神と化したラムセス二世の像だ。
彼は第19王朝のファラオで、太陽神ラーを名乗り、神の力をもってエジプト中に巨大な神殿を造り続けた。

abusimbel3.jpg
ハトホル神殿。左から2番目と右から2番目がネフェルタリ像

実は、アブ・シンベルにはもうひとつ神殿がある。
アブ・シンベル小神殿で、愛と美の女神ハトホルを祀っていることからハトホル神殿とも呼ばれている。
ラムセス二世が結婚25周年を記念して王妃ネフェルタリに贈ったのがこの神殿なのだ。

ラムセス二世は8人の妃をめとったが、15歳の時に結婚した第一王妃がネフェルタリだった。
ふたりの仲はむつまじく、エジプト中で話題にのぼるほどだった。

王が政略結婚から別の妃をもらっても、その関係が崩れることはなかった。
その愛の証として彼女に贈ったのがハトホル神殿だ。

ハトホル神殿の入り口には、ラムセス二世の立像と、女神ハトホルとなったネフェルタリの立像が仲よく並んで立っている。
ラムセス二世は彼女を神として扱い、永遠にふたりで生きることを願った。
古代エジプトにおいて、妃の像がこれほど大きく扱われることはなかったし、妃のためにこれほどの神殿が建てられることもなかった。

abusimbel2.jpg
4体の神像が収められた最深部の至聖所。1年に2度、朝日が60mの回廊を通って神像を照らす

ところが神殿の完成後まもなく、ネフェルタリは亡くなってしまう。
ラムセス二世はその死をいたく悲しみ、テーベに建てた墓を美しく装飾してこう刻み込む。

「私が愛したのはただひとり。あなた以上の人はいない」

神たるファラオが人たる姿を見せることが許されなかった時代、ラムセス二世はその愛を隠そうとしなかった。



国名:エジプト
名称:アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群
Nubian Monuments from Abu Simbel to Philae
登録:1979年
基準:文化遺産(i)(iii)(vi)
概要:アブ・シンベルは紀元前13世紀にラムセス二世が岩山に彫った二つの神殿からなる。エジプトは1960年代にアスワン・ハイ・ダム建設を発表。遺跡水没の危機に対し、ユネスコは救済キャンペーンを展開。60か国以上の支援を受け、神殿は千以上に切り刻まれた後に移築された。これが世界で遺産を守る活動=世界遺産条約誕生の発端となった。同時期にフィラエ神殿も移築されている。

※本記事は『intro.G』に連載された「二人で行きたい世界遺産」のテキストです

アブシンベル/エジプト(All About「世界遺産」)

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