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エロジー5 エロスの条件

2008年09月05日 14:18

それとは気づかずエロスに恋い焦がれるお嬢さん。
あなたはすてきなプロポーションをお持ちだ。
そのドレスもとても美しい。
でもあなたはどこか人形のようですな。
あなたは自分自身お気づきでいらっしゃる。
おさえきれぬ衝動があなたの中にうごめていることを。
――私の中に私の知らぬ私がある――

なぜダイエットしているのですか?
なぜ着飾ろうとするのですか?
それで違和感は取れましたかの?

ほぉ、あなたの持つその雑誌、なるほど、だからダイエットをはじめたと。

――ケンブリッジ大学の研究者たちが“美しいクビレの法則”を数学で証明した。論文によると、ウエストはヒップの70%の太さであることが条件。その黄金比ボディを持つ女優にはジェシカ・アルバなどがおり、マリリン・モンローやミロのヴィーナスなども1:0.7のボディ・ラインの持ち主である――

なるほどあなたが人形に見えるわけですな。

たとえば黒のドレスを着て盛装した恐ろしく美しい女がいますな。
その女が猫背・ガニ股で、ビュッフェで動物のように食べ物をあさっていたらどうでしょう。
美しいですかな?

あの芸者をご覧なさい。
和服に身を包み、ほとんど肌の露出がない。
しかし、あの立ち方、あの身のこなしのおかげでクビレと言われるものは裸でいるよりもいっそう強調されているじゃありませんか。
あの衣装、あの視線、あの口調、あの会話のおかげであなたよりもはるかに「性」を振りまいておりますな。

あの女が美しいのは黄金比ボディとやらを持ち、最高のドレスを着ているからではありません。
女の身体、ドレス、身のこなし、視線、口調、すべてが調和してひとつの物語を描いているからなのですよ。
アート的な「美」は限りなく普遍に近いものですが、「女」はそういう意味での「美」ではなく、ひとつの物語なのですな。

たとえばサルサを踊る黒人のたくましい女。
日本基準で言えば「太い」ということになるのでしょうが、たまらなくセクシーな女がいます。
その衣装、その視線、その動作、その会話、そしてその身体……
それは彼女のこれまで聞いてきた音楽や着てきた衣装、付き合ってきた男、育ててくれた家族、それらの結果としての彼女の全体からしみ出してきたものです。
そのすべてを受け切って、その瞬間、その形でその場に立っているわけですな。
「これが私」だと。
「私はこんな風に感じている」のだと。

女とは物語です。
これまで感じてきたこと、いま感じていること、今後感じていきたいことの物語です。
「私のエロスはここにある。感じている私を見てくれ」と。
そして「私こそがエロスである」と。

あの芸者がセクシーなのは、女が女として感じ切っているからです。
心の底からあの衣装、あの視線、あの動作、あの会話、あの身体を美しいと感じ、その快楽を全身で受け止め、さらに「私はいま感じている」と全身で物語を発信しているからです。

あの黒人がセクシーなのも同じこと。
彼女にとって「女」とはあの衣装、あの視線、あの動作、あの会話のことであり、そうした自分の女をさらけ出しているからです。

「でもみんな1:0.7が美しいって言ってる」ですって?
そう信じているんですな。

大衆が「1:0.7が美しいのだ」と信じて自分の美観を再定義しただけです。
実際に「1:0.7」が美しいのかどうか、自分がどう感じるかなどはどうでもよいのですよ。
そんな女からは感じて身もだえしている「女の姿」など見えるわけもなく、見えるのは「1:0.7は美しいはず」だという思想、人間が作り出した概念。
お安いプロパガンダですな。

だからその女が「1:0.7」になったとて、なれるのは美女じゃなくてせいぜい消費者。
自分が演じてる「消費者」という物語が透けて見えてしまいますからの。
わかりますか、あなたが時々人形に見える理由が。

あの黒人を見なさい。
全身で女を感じ切っている。
女が人生で感じてきたことを全身を使って表現している。
そしてこのように感じるのが私なのだと、自分をさらけ出している。
エロスになり切っている。

あの芸者を見なさい。
全身でエロスを演じ切っている。
女が和服に縛られ、作法に縛られ、時間に縛られ、社会に縛られ、痛めつけられながらも、どうしようもなくエロスの快感が噴き出してしまっている。

おやおや。
あの女を見ているだけであなた、身もだえしてるじゃありませんか。
うずいているではありませんか?

やはりあなたには素質がある。
くだらぬプロパガンダにとらえられてはいても、あなたの身体はそんな思想を超えてエロスを感じてしまっている。
見つめてごらんなさい。
あなたの奥底に潜んでいるその衝動を。

怖いでしょうな。
不安でしょうな。

大丈夫ですよ、お嬢さん。
あなたは自分が何者か知らず、これまで見聞きしたすべてのことがすべて嘘であっても、幻であっても、夢であっても、あなたの感じる痛みは確実に痛みです。
同様に、あなたの感じる快楽も確実に快楽です。
痛みや快楽こそがあなたなのですよ。

アートとは、エロスとは、人間の原初のルール。
人の秘密にアクセスする数少ない方法がアートであり、そしてエロスなのです。

これからあなたに与える痛みと快楽。
存分に味わってくださいな。

エロジー4 フェティシズム
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