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グルメ17 極地 at レストラン カンテサンス

2008年06月17日 05:00

もうフランス料理は食べたくない――
あの余韻を忘れぬよう。

もう他のフランス料理店に行きたくはない――
この店さえ存在すればいい。
すごい。
あまりにすごい。

感動は伝えたいが、テキストなんかで表現したくない。
だってどう書いたって表現できっこない。
だからって、自分に別の表現手段があるわけじゃない。
いつだって物事をメタ的に表現するしか方法がない。

切ない。
切ないぜ。

でも、だからこそ、それを共有できたときは、ね。

 * * *

カンテサンスにはメニューがない。
あるといえばあるのだが、白紙。

その時ある最高のものを、最高の状態で出す。
「最高の状態をすぎてしまっていれば、出す直前であってもメニューは変更します。料理を提供するまでメニューは確定しません」
だって。

それでも絶対に変わらぬ不動のメニューがある。
岸田シェフのスペシャリテ、「塩とオリーブ油が主役 山羊乳のヴァヴァロワ」と「メレンゲのアイスクリーム」だ。

ともに主人公は「塩」。
ヴァヴァロワとアイスクリームなのにね。

そうだな。
大聖堂の闇夜。
ただでさえ暗い空間が真の闇に。
まったくの無。
イリヤの夜。

刹那。
厚い雲の間から熱のない冷たい月夜が一滴、ステンドグラスにポトリと落ちる。
月のしずくを受けて一重の波紋が伝わると、波が伝わる一瞬だけ、ステンドグラスはその豊かな色彩を取り戻す。

ポトリ。
ポトリ。
小さな水滴を受けて見え隠れするステンドグラスの万華鏡。
真の闇に花咲く「色彩」の真実。

岸田シェフの塩は月夜のひとしずく。
塩を感じた瞬間に広がる想像を絶するほどの味覚。
なんて美しい――

でもそれはほんの刹那のできごと。
なんて儚(はかな)い――

主人公は「塩」。
それを聞いて最初は「何言ってるんだ」と思ったが、いまではその表現の意味が切ないほどによくわかる。

主人公は「塩」。
たったこれだけのテキストにどれほどの真実が込められていることか。


ソース。

フランス料理の真髄はソースにある。
よくこう言われる。
自分はこの店でソースの意味をはじめて知った。

加茂茄子のソース。
加茂茄子以上に加茂茄子。

マンゴー・ビネガー。
マンゴー以上にマンゴー。

ドレス。
最高級の素材を使ったシンプルで艶やかなイブニング・ドレス。
それ単体でも恐ろしく美しい黒のイブニング・ドレスは、まとう者の細やかなラインを際立たせ、裸よりもはるかに女性を女性らしく見せてしまう。

泡状のソースはまさにドレス。
合わされる素材にうまく絡みついて耐えることが苦痛になるほどsexyな味覚を形成する。

なんて官能的な――


感覚の不思議。
時間の不思議。
人の不思議。
社会の不思議。

少し大げさに聞こえるかもしれないけれど、でも少しも大げさじゃない。
その皿にはたしかに世界のあらゆる不思議が詰め込まれている。


フランス語“Quintessence(カンテサンス)”。
1.物理学において“進化する世界を説明するために存在しているとされているエネルギー”
2.古代哲学や中世の錬金術において、火、空気、土、水に続く5番目の元素である“エーテル”
  (中世まではこの5つの要素で宇宙の万物が構成されていると考えられていました。)
3.フランス人はこの言葉に“物事の本質”“神髄”“エッセンス”などを連想します。
              (レストラン カンテサンス、公式サイトより)

あの世界にまた浸りたい。
できればずっと浸っていたい。

また次回の予約を入れてしまおうかと思ってしまう。
予約が本当にとれなくて、とれたとしてもだいたい2か月後。
で、食事を終えたらまた予約。
そうしてつねに予約待ちでいつづけたい。

こんな店ははじめてだ。

Restaurant Quintessence

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